キャラクターからアイコンへ~『スヌーピー展』@森アーツセンターギャラリー
友人に招待券を頂いて、一緒に行ってまいりました。
結論から言うと、大変充実していて素晴らしい展覧会だった、という月並みな一言に尽きます。
最初のセクションではチャールズ・シュルツ氏の生い立ちを、それが元になったピーナッツの原画を交えて紹介しているのですが、
ここでシュルツ氏が少年時代に影響を受けた漫画も展示しているのですね。どれも彼が過ごした時代背景の解説が付いていて。戦前・戦後のアメリカの空気が、大衆文化を通して実感として伝わってくるのです。
ここからもう『ピーナッツ』は確実にアメリカの一部を象徴するものなんだ、という予感が伝わってきました。
ざっくりくくると展示はシュルツ氏の生涯・『ピーナッツ』の作品遍歴の紹介と構成されているのですが、圧巻なのは後半の作品遍歴でした。
もちろん年代順で、重要なトピック(主要なキャラクターや、スヌーピーの変装コレクション)に分けられており、
初期の可愛らしい子供たちの様子から、登場人物も内容も円熟し単純さと複雑さが見事に溶け合った中期、そしてどこか達観した境地にすら至ったミニマリスティックな後期、と一気に見ていくと、
キャラクター達と、シュルツ氏自身の発展なり成長なりが重なって、何か大河ドラマを観たような気分になるのです。あんなにユーモラスな作品なのに!
そこに、ちっぽけでどこにでもいるキャラクター達が、どんどんと読者(当時のみならず今の自分も)にとって大事な存在となる意識の過程も加わって、気が付くと涙が出そうになりました。
それが最もよく表れていたのが、途中に挟まれたNASAのイメージキャラクターになったスヌーピーのセクションだと思います。
宇宙開発が進み新たなフロンティアが拓け、アメリカの人々が未来に屈託のない希望を抱いていた時期と、決して変わることのない安心感を与えてくれる『ピーナッツ』の特性(それは逆説的にチャーリー・ブラウン達が将来への不安を表明するから保たれるのですが)が接触し、スヌーピーないし『ピーナッツ』がアメリカの代表的なアイコンとなった瞬間を見たようでした。
長々と熱のこもった文を書いてしまいましたが、兎にも角にも圧倒されたのは、
単に「可愛いな」「面白いな」と思っていた些細なものが(実際子供しかいない作品ですし)、人々の心の中枢となる巨大なものへ発展したことです。
それをはっきりと確認でき、またリアルタイムで作品を読んできた世界中の人と自分の思いを共有したこの展覧会は私にとって非常に有意義なものでした。
…後はミュージアムショップが散財必須なほど充実していましたしね…。